バイオ部会とは

バイオ部会へようこそ

バイオ部会は2000年9月に発会式を行い、第1号の部会として活動を開始した。バイオテクノロジーは二十一世紀を支える重要な基幹技術の一つと考えられる。多くの学会等がバイオテクノロジーをキーワードとする活動を行っている。バイオ部会は化学工学の視点からバイオテクノロジーの発展を狙うものであり、独自の活動を目指している。学会内で活動していた4つのバイオ関連研究会(生物化学工学と生物分離工学の2特別研究会、バイオプロセスシステム工学とバイオメディカルの2研究会)が発足の母体となっているが、部会活動の範囲と目標は以下に述べるように広く捉えている。

化学工学は手段と方法の学問である。対象をバイオ関連技術とするバイオ部会では、化学工学の視点から将来発展させるべきバイオ関連分野を可能な限り広く取り入れることとし、表1に示す6つの分科会を設けた。部会発足に当たり化学工学会にあってバイオ部会が果たすべき役割と部会として活動することの意義と利点、構成メンバーが享受するメリットについての議論を重ね、表2に示す5項目を活動の基本指針とした。これを実行するために、ニュースレターや出版物の発行、研究発表会、講習会、シンポジウム、展示会などの開催、国際会議などの開催と後援、化学工学会の年会、秋季大会、支部大会、支部行事などへの協力、当該研究分野に関する内外の関係機関、団体などとの学術・技術の交流及び協力、当該研究分野に関する調査、研究情報の収集と提供、受託研究及び共同研究、その他前述の目的を達成するために必要な事業を行うこととしている。

二十世紀のテクノロジーは、人類が生活をするために必用な衣食住の保証を目指した。二十一世紀のそれは「人類が健康で快適な生活を営むために有用でかつ社会に受け入れられる技術」の提供を目指すべく脱皮しなければならない。バイオ技術はその一翼を担う分野であり、化学工学の視点からこれに貢献しなければならない。表1に示す専門分科会の名称がこの目標を端的に示している。生物の特異的触媒作用を利用するプロセスは物質生産においてその省エネルギー性と高選択性の効果が期待される。高付加価値の多品種少量生産はバイオプロセスが得意とするところであり、インスリンやエリスロポイエチンなどの医薬品、各種アミノ酸や色素などの飼料・食品添加物などの生産プロセスで実績が蓄積されている。生物プロセスおよび生物分離分野が対象とする具体的な例である。一方、バルク製品生産へのバイオ技術の応用展開はアクリルアミドの他はまだ際立った事例が認められない。十数年前のバイオブーム発端の頃、ある製鉄会社のバイオ担当者が、工学屋が行うバイオは例えば溶鉱炉をバイオプロセスに置きかえることの可能性を追求することであろう、という意味のことを言われた。鉄はまだであるが、全世界の銅精錬プロセスの大部分はすでにバイオプロセス(バクテリアリーチング)に転換されている。化学品原料を含む各種素材生産プロセスは化学工学の研究対象であり、生物プロセス分野と生物分離分野の対象である。

工学に裏打ちされた細胞培養技術の進展と分離精製技術の応用が医治療の現場で実績を挙げている。たとえば、患者本人の細胞を用いて皮膚や軟骨を培養工学的に調製する免疫反応回避型移植技術は医学と工学のハイブリッド技術である。メディカルは医学者だけの世界ではなくなりつつある。人の健康に直結する分野での合理的なバイオ工学の応用展開はメディカル分野の対象である。

非線形性が著しく関連変数が非常に多いことなどからプロセスの制御や管理が困難とされているバイオプロセス制御を対象とするのが生物情報分野である。さらに、遺伝子やタンパク質を構成するアミノ酸配列の解析が進み関連データベースの蓄積が驚異的速度で進行している現在、これらのデータベースから機能を抽出・創生する情報解析は生物情報分野の対象である。

環境というキーワードはその主体である「人」を含めた生態系を通して生物を抜きにしては考えられない。生物機能を最大限に活用して、バイオレメディエーション技術による環境の浄化やクリーナーテクノロジーの創生により健全な環境保全に寄与すると同時に新たな環境創造への寄与を目差すのが環境生物分野である。

食品製造における各個的工学課題は勿論のことであるが、二十一世紀の食料事情を考慮して展開すべき工学的アプローチを対象とするのが食料・食品分野である。

バイオ部会が当面対象とする上記の分野はいずれもバイオが明確に関連するものの、バイオだけで答えに到達できる分野はほとんどない。化学工学を含むさらに広い分野との連携が不可欠になっている。このための総括的支援がバイオ部会の重要な役割である。この認識の下に、分子レベルで生物分子の構造や機能の解析を目差す関連分野はもちろんのこと、その応用を目差す他学会などとの連携を積極的にすすめることにしている。例えば、メディカル部門では、医学や薬学のシンポジウムやワークショップでバイオ部会として積極的に主催や共催をする。化学工学者にとって医学や薬学の研究者に受け入れられる工学的研究戦略を理解するきっかけが得られよう。

部会活動の重要な側面として、学会の定例大会等におけるシンポジウムや国の内外における調査などを通して問題を提起し、その結果をまとめて政府関係団体等や社会に提言を行いアカデミック集団としての責務を果たすことも重要な位置付けとする。

上記の諸活動のためには、運営資金の調達など幹事をはじめとする部会メンバーに多大の苦労をお願いせざるを得ない。しかしながら、小さな研究会がもつ制約を超えて、大きな自由度の下に、各種の魅力ある企画とメンバーの積極的な参加によって化学工学のバイオ関連分野を発展させたいと考えている。政府省庁の共同施策として2010年を目標とするバイオ産業技術国家戦略が提示されている。この提言に続く諸施策の提言を各方面にすることは公の組織体として重要である。バイオ部会は、会員自らは勿論、社会にとってもなくてはならない存在にならなければならない。

バイオ部会は、化学工学という基盤の上に確固たる独自の学術体系と活動理念を築いて、関連学会をリードし、新産業創生・育成の示唆をし、活動成果を社会に還元することを目指している。


表1◆ 専門活動単位としての専門分科会

1)生物プロセス分野専門分科会
2)生物分離分野専門分科会
3)メディカル分野専門分科会  
4)生物情報分野専門分科会
5)環境生物分野専門分科会
6)食料・食品分野専門分科会


表2◆ 部会活動の基本方針

1)会員が自らの研究や業務の展開のために切磋琢磨する場を提供すること---最先端の研究を行っている研究者や事業体およびその従事者が研究発表の場を介して自己研鑽できること
2)会員に関連情報サービスを提供すること---講演会、講習会、シンポジウムなどを通して、部会ならびに会員が保有する知的財産を会員に還元すること
3)会員が国際的に活動できるように、バイオエンジニアリング分野の日本の代表として支援すること--国際的な学会、シンポジウム等の企画や後援などを行うこと
4)アカデミックな専門家集団の立場からバイオ技術に関わる諸事項の積極的なサービスや提言を産業ならびに社会に対して行うこと---時に応じて重要かつ必要な課題を取り上げ、ワークショップやシンポジウムを開催し、基準、制度、などを提言すること
5)工学の部会として、現在の学問体系を越える展望を切り開くこと---他の学会等で行われていることの真似や利用の枠を越えて、化学工学分野に基礎を置くという特殊性と利便性を生かした“今を越える”新たな展開の芽を創出すること


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